
動態保存SL・内外比較
- ●フォト・ランで、「乗っても撮れる」
アメリカ合衆国では、ユニオン・パシフィック鉄道の世界最大の動態保存SL、チャレンジャー号牽引の列車が年に一度だけ走る。この列車は、撮影ポイントでは乗客を降ろし、希望の場所までバック、乗客が走行写真を撮れるようになっている。
また、ヨーロッパでは、ファンの乗車列車の前後に撮影用のサポート列車を運転することもめずらしくない。 某団体の記念列車でもフォト・ランが行われたそうだが、こちらはバスで列車の先回りをするもので、マイカーでの追っかけを集団的に行ったに過ぎない。
- ●過剰警備は日本だけ
冬に磐越西線でD51が走った時のこと。沿線の道路には追っかけのクルマが殺到、普段全く渋滞が起こらない場所が大混乱となった。各踏切にはJRの職員が目を光らせる物々しい警備態勢。撮影ポイントでは怒号・罵声が飛び交う。熱しやすく(冷めやすい)ファン気質が、常に監視されながら撮影する状況を作り出してしまった。鉄道趣味が大人の(あるいは家族の)ものとして定着しているヨーロッパではまず見かけない光景である。
- ●イギリスは保存鉄道王国
鉄道発祥の国イギリスには、100カ所以上の保存鉄道があり、SLを主体にした運行が行われている。日本にもナショナルトラストによるトラストトレインがあるが、こちらは車両の修繕・手入れや乗客案内などはボランティアが行うものの、列車の運行自体については大井川鉄道に委託している。
イギリスの場合は機関車の運転や切符販売、信号扱いに至るまでボランティアの手に任されており、実業家や大学教授、医者など(収入がありそうな人々)が休日や夏休みを利用して運営に携わっている。そして、これが遊園地の施設ではなく、一般の営業路線なのである。日本では種々の規制によりこのようなことは不可能であるが、イギリスには本当の意味での保存鉄道があると言える。
- ●記念行事は盛大に
1987年に鉄道150年を迎えたオーストリアでは、同年、チェコやハンガリーからの参加も含めて各時代のSL約20両による車両パレードがウィーン郊外で行われ、1万人の観客で賑わった。オーストリアは北海道とほぼ同じ面積、人口約750万人の小国でありながら、これだけの記念行事を催すことができるとは何ともうらやましい限り。SLの代表的形式を集め、生きた状態で展示するというコンセプトで作られながら、そのほとんどが単なる飾り物となっている某国の蒸気機関車館とは大違いである。
初出:鉄道友の会東京支部日曜サークル機関誌「休日運転」bP78(94.11.27)
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