チョコ電は富士の裾野に・フォトギャラリー
チョコ電は富士の裾野に
「チョコ電」として親しまれた江ノ電 800形 801− 802の2両(元山梨交通)が、1000形1501−1551の登場と引換えに廃車となったのは昭和61年4月のことである。私はこの車両の行方に興味があった。というのは、自分の母親の実家が甲府にあるのと、山梨交通の電車線は廃止が早かったため(昭和37年6月廃止)、あまり鉄道趣味誌上でも紹介されることがなく、自分にとって謎に包まれた存在だったからである。
801号は、生まれ故郷の山梨県増穂町利根川公園に保存された。ここへ行くのは一苦労なのだが、途中の行程も楽しむというつもりで出かけてみてはいかがだろうか。甲府駅前のバスターミナル5番乗り場から、山梨交通の鰍沢営業所行きに乗る。「西野」経由と「十五所」経由の2つがあるが、「西野」経由に乗ろう。山梨交通電車線のルートを忠実にたどって走るからだ。だいたい1時間に1本出ている。駅前の平和通りから国道52号線に入り、荒川橋を渡ったところで国道のバイパスらしき道路が別れるが、これがかつての線路敷らしい。駅前を併用軌道で抜けた電車は、このあたりから国道52号線に沿った専用軌道で青柳町の甲斐青柳(現在バスの青柳車庫になっている)まで走っていた。桃畑の中を走っていた電車を想像しながらバスに乗る。国道沿いの商店の家並が古めかしく、妙ななつかしさを感じる風景が続く。降りるバス停は「長沢新町」か「長沢火の見」。801号はその中間の利根川公園にある。ここまで約1時間かかる。
一方、相棒の 802号はどうなったか。廃車体データベースにも載っていないところからして、解体されてしまったのか。実際は、静岡県裾野市の標高900mに広がる十里木(じゅうりぎ)高原別荘地において、西郷 力さんという方に大切にされていることが「徳光和夫のTVフォーラム」(NTV)で紹介されていた(88年4月17日)。
『すごい方がいらっしゃるんですね。個人で江ノ電の払い下げ車両を買って、別荘のリビングルームとして使っているんですよ。車両の値段が 120万円、ここに運んで保存するのに何と1500万円かけたというマニアックぶりなんですよね。この西郷さんに言わせますと、チョコレート色の車両なのでチョコ電と呼ばれているそうなんですが、この古めかしい車体がどんな骨董品よりも値打ちがあるんだそうですね』
十里木高原は、日本ランドや富士サファリパークの近くに位置している。御殿場か裾野の駅からバスも出ているが、地図で見ると別荘地は高原の2か所に別れていて、ここを歩き回るのは骨が折れそうだ。やはり車で行った方がよさそうな場所である。私はまだ現車と接していないが、ぜひ一度見たいものだと思っている。
富士の裾野で余生を過ごす2両の兄弟電車は、もうお互いに顔を合わすこともないだろうが、何を思っているのだろうか。
初出:鉄道友の会東京支部日曜サークル機関誌「休日運転」bP74(94.7.17)
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